医療とテクノロジーの進化

近年、医療機関では少しずつ電子カルテの普及が進んでいますが、神奈川県は患者さんが病院で薬をもらう時に必ず発行されるお薬手帳の電子化にも取り組み始めました。
神奈川県はIT を活用したマイカルテ構想の推進の一環として、このお薬手帳の電子化に乗り出したということです。

神奈川県は5月末に検討委員会を設置し、お薬手帳の電子化のモデル事業の具体化に向けた作業部会を立ち上げました。
作業部会は、9月をめどに中間報告をまとめて委員会に諮り、2012年度内には、お薬手帳のモデル事業をスタートさせることを目標にしています。
お薬手帳のモデル事業は、神奈川県の医療のIT化のグランドデザインの一部分となっており、そのグランドデザインは、5年ごとに見直されることによって、地域医療計画の指針となる役割を果たしています。

このグランドデザインは、10年後までの地域医療を見据えて策定されています。
神奈川県の医療のグランドデザインは、より地域に密着した医療、開かれた医療と透明性の確保、そして、病気にならない取り組みを進める、という三つの目標を掲げています。

またこのグランドデザインでは、薬剤師に関する目標も掲げられており、より地域に密着した医療を目指す上で、従来通りの調剤中心業務はもちろん、疾病管理の分野と連携して活躍することが期待されています。
そして、このグランドデザインではさらに、チーム医療推進に関する目標も掲げています。

これからの医療に

神奈川県は在宅チーム医療に、介護サービスとの連携をより密にすることを期待しています。
特にこれから在宅医療に求められる分野として、歯科医師が活躍する虫歯、歯周病治療などの口腔ケアと、そして、薬剤師による患者の薬歴及び疾病管理が挙げられています。

そして、お薬手帳の電子化が、薬剤師による薬歴及び疾病管理や、異なる医療関係の職種間での連携を強めるためのツールとして役立つことが期待されています。
神奈川県は本格的な医療のIT化をすすめていくにはまだまだ時間がかかるとしており、まずできるところから患者のデータの電子化を推し進めていこうということから、お薬手帳の電子化のモデル事業を実施することに決めたそうです。

つまり、お薬手帳の電子化のモデル事業立ち上げは、神奈川県が構想をしている、県民の医療と保険の情報の電子化に向けた試金石であるといえます。
神奈川県の担当者は技術的にお薬手帳の電子化は可能であるとしており、その標準化と産業化の枠組みをこれからどう作っていくかがポイントになると語っています。
また、お薬手帳の電子化はあくまでも神奈川県民の利益を優先する形で進めなければならない、とも、神奈川県の担当者は語っています。

これまでも神奈川県では、医療と保険の情報の電子化を目指して公的資金を財源とした研究費で実証実験を進めてきましたが、研究費の支給が終わるとともに、その運用は中断してしまっていました。
しかし今度は、正式な県の事業としてお薬手帳の電子化が行われるため、より公共性と公益性の強いものにすることが求められています。