危険な食材

先日、福岡市の居酒屋で残念な食中毒の事件が起きてしまいました。
居酒屋で牛の生レバーなどを食べた家族4人が相次いで下痢や腹痛などを起こし、このうちの2人から食中毒の原因菌のカンピロバクターが検出されたそうです。

この家族は、2012年の7月から飲食店での牛の生レバーの提供を全面禁止する方針を打ち出したことから、食べ納めということで牛の生のレバーを食べたようです。

現在、全面禁止を見据えた牛の生のレバーの駆け込み需要が全国で増加しているようです。
富山県の焼肉店では、牛の生レバーの食べ納めの特需も起こっています。
他にも全国で、飲食店で牛の生レバー提供がされなくなることを惜しむ声が強まっています。

これほど惜しむ声が強まっている牛の生レバー提供全面禁止ですが、ではなぜ、厚生労働省はそれを決めたのでしょうか。
それは、牛の生レバーを食べることによる食中毒を引き起こすカンピロバクターや、O-157への感染の危険性を考えた上でのことです。

重いリスク

2011年の末に、O-157が牛の生レバーからも発見されたというニュースが報じられたそうですが、このときからすでに厚労省は、牛の生レバーの提供の全面禁止に踏み切る方向に動いていました。
カンピロバクターに感染しますと、下痢や腹痛、発熱や嘔吐、頭痛などの、普通の食中毒と同じ症状が出るそうですが、子供やお年寄りなど、抵抗力の弱い人がこの菌に感染してしまいますと、症状が重症化してしまう危険性があります。

そしてO-157は、カンピロバクターよりもさらに毒性の強い菌です。
この菌は、100個程度の菌が体内に入っただけでも食中毒の症状を起こしてしまうほどの、非常に強力な感染力を持っています。
これが通常の食中毒を引き起こす菌ですと、100万個以上体内に入らないと食中毒の症状が出現しません。
つまり、O-157は普通の食中毒の菌の10000倍もの強力な感染力を持っているのです。

O-157に感染しますと、成人では4日から5日間の潜伏期間を経た後に、激しい腹痛とともに水のような下痢の便や、血の混じった下痢の便が出ます。
成人は軽い下痢ですむことが多いそうですが、中には重症化してしまう人もいます。
O-157の怖い点は、この重症化した時の症状が重篤であることです。

O-157の感染症が重症化しやすいのは、抵抗力の弱い子供やお年寄りで、こういった人た感染しますと、死亡する危険性すらあります。
重症化しますと、溶血性尿毒症症候群(HUS)と呼ばれる症状が起こります。
HUSのおもな症状は、顔が青白くなる、倦怠感、出る尿の量が少なくなる、むくみが起きる、というものです。
傾眠(眠くなりやすい)、幻覚、痙攣といった中枢神経の症状もみられる場合もあります。

また、HUSの兆候として現れる症状には、赤血球が壊れて貧血の症状がみられる、血小板の数が少なくなり、異常に出血しやすくなる、腎臓の働きが低下する、があります。
さらに、HUSは脳症も引き起こします。
HUSが引き起こす脳症の予兆とみられる症状には、頭痛や傾眠、多弁(口数が多くなること)、幻覚などがあり、この数時間後から12時間後に、痙攣と昏睡の症状が現れます。

このように、厚労省が牛の生レバー提供の全面禁止に踏み切ったのにはきちんとした理由があります。
むやみに食べ納めブームに乗らないように注意したほうがよいでしょう。